オーラライト23 「記憶の響き 〜忘れられた神殿の祈り〜」

オーラライト23 「記憶の響き 〜忘れられた神殿の祈り〜」

透明な静けさに包まれた、遥か昔の地球。まだ“言葉”を持たず、“音”で記憶を綴っていた時代。そこには、性別も、名前も、上下もなく、すべてが「音」と「光」で語られていた世界がありました。
そこに生きる者たちは、「何かにならなければならない」とは思っていませんでした。
「ただ在ることが、すでに美しい」──その純粋な感覚の中で、彼らは生きていたのです。

存在とは響き。
響きとは、宇宙と共に呼吸すること。その呼吸が、愛であり、創造でした。この地球という青い星が、宇宙の“ひとつの楽器”として目覚めたとき、その中心に建てられたのが──ウルレイア神殿
音を記録し、響きを通して宇宙と繋がる、祈りの場。神殿は“建てる”ものではありませんでした。それは、「響き」によって立ち現れるものでした。巫女たちの歌と、建築士たちの光の配置によって、神殿は目に見える形となり、その存在自体が、ひとつの“星の共鳴装置”となっていったのです。
“星の建築士”と呼ばれた存在たちは、石や水、風、光──すべての素材に宿るリズムを聴き取りながら、まるで音楽を奏でるように神殿を紡いでいきました。石は単なる物質ではなく、意志ある存在でした。建築士たちは、石の願いと光の通り道を読み取り、それを宇宙の音と重ね合わせることで、地上に星の叡智を結晶化させていきました。
そして、そこに一緒にいた“音の巫女”たち。彼女たちの声はコードであり、響きそのものが祈りでした。言葉のないその歌は、星々の記憶──宇宙の呼吸──を運んできて、地球という楽器に優しく響かせていきました。
巫女が歌えば、石が光り、建築士が石に触れれば、風が踊り、光が差せば、水が揺らめき、すべてが共鳴し、そこに“創造”という感動が生まれました。彼らにとって“感動する”ということは、エネルギーを動かすこと。
つまり、それは創造そのものだったのです。
使命でも義務でもなく、ただ“愛する世界と共に歌う喜び”。それが、彼らが神殿を創っていた理由でした。
彼らの願いはひとつだけ──

「この響きが、未来のわたしたちと響き合いますように」

それは願いではなく、確信でした。いまこの音が、未来に光として届き、まだ見ぬわたしたちが、その響きを内側で“思い出す”日が来る。さらに音を重ね、さらに宇宙の奥深くへの真理への共鳴に辿り着く。。。それを信じて、彼らは歌い、創り、喜びを重ねていたのでした。

時が流れても、神殿はその場所にありつづけました。けれど、かつて音と光だけで交わされていた「響き」は、いつしか“言葉”というかたちへと変わっていきました。人々は言葉を使い、考えや気持ちを伝え合い、学び合いました。でも同時に、言葉には限界もあることを、だんだん感じるようになったのです。

「どうして伝わらないんだろう」
「同じことを話しているのに、どうして違って聞こえるんだろう」

言葉が生まれたことで、通じ合うことが難しくなってしまった部分もあったのでした。その変化を、最後の巫女エテナと建築士ラーエルは静かに見つめていました。そして、深いところで感じていたのです。
──このままでは、神殿が持っていた本来の響き、宇宙とまっすぐに通じる共鳴の力が、忘れられてしまうかもしれない──と。

「もう一度、この神殿が“本当の響き”を取り戻せるように」

そう決めたふたりは、神殿の一番深い場所で、音と光のエネルギーを集めはじめました。神殿そのものが、ただの建物ではなく、未来へ響きを届けるために“設計された装置”のようなものだったことを、彼らは知っていたのです。

静寂の夜、星々のさざめきが空の彼方で囁く頃。エテナとラーエルは、ついに最後の結晶石の間へと辿り着きました。この場所は、世界の始まりと終わりが重なる“中間の場所”——空間も時間もない、「感覚の奥」にある、記憶の海。

そこに現れたのは、三柱の精霊たちでした。
姿はありません。しかし、目を閉じれば胸の奥にふわりと灯る色があるのです。それは夕暮れでも、朝焼けでもない。言葉にしようとすれば、すぐにこぼれ落ちてしまうものでした。

でもエテナは感じていました。光の大精霊リューミアは彼女の中の「祈りの記憶」に触れています。まだ言葉を持たなかったころ、世界と心が分かれていなかったころ。その名残が、この光に溶けていました。

ラーエルの背後で、どこからともなく微かな“鼓動のような音”がしました。耳では聞こえない。でも胸の奥で記憶が振動しているのがわかるのです。音の大精霊ネゥリの音は、石の歌。地球の記憶。そして、ラーエルがかつて「音で建てた建築」の真の意味を彼に返していきます。それは構造ではなく、魂と空間を共鳴させる音の舞踏。その中心に、ラーエル自身が立っていました。

エテナの手元にある古文書の文字が、ふわりと宙に舞い、そのまま意味のない「線」となり、空間に浮かび上がりました。でもエテナは驚きませんでした。その線たちは、形の大精霊サイル——「感じるかたち」だったのです。サイルの存在は、「輪郭のない存在」たちを可視化するために、人々がかつて感じていた“エネルギーの骨格”。エテナがその線に指を重ねた瞬間、言葉が剥がれ、記憶が起動しました。

すべての音、すべての光、すべてのリズムは、宇宙の真理を思い出すための「鍵」。言葉では伝えきれない深い感覚が、その中に込められていました。ふたりはその響きを、ひとつの石に結晶させました。この石は、ただの鉱物ではなく、未来の誰かが “響きを思い出す” その瞬間のために残された、“記憶のかけら”だったのです。

二人が最後に残したものは、言葉ではなかったけれど、胸の奥に確かに届くようなエネルギーでした。

「言葉を持ったあなたが、再び言葉を外し、感覚の森へ戻るとき。」

終わりではなくむしろ、新しい進化の始まり

——感覚と理性が抱き合い、言葉と沈黙が寄り添い、過去と未来が、重なる場所へ。
そしてこの石を目にしたあなたもまた、この響きを思い出すひとり──忘れられた神殿の続きを、心の奥で奏でる存在なのです。

オーラライト23

今回は「石」と「絵」のセット販売です。「絵」と一緒に「石」もお届け致します。

  • 石サイズ:4.5×3cm
  • 店:Maura
  • 絵サイズ:9×9cm
  • 額サイズ:15×15cm
  • 51,000円(税込・送料・額代込)

       

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