ハートの白いラブラドライト 「エシュラスと本当の女神のひかり」

ハートの白いラブラドライト 「エシュラスと本当の女神のひかり」

エシュラスという名の女神の見習いがいました。
エシュラスは、女神の神殿でひっそりと暮らしていました。人々からはその姿は見えません。神殿にはたくさんの本当の女神たちがいて、それぞれが自然や命、祈りの仕事をしていました。

エシュラスは毎日、女神たちの仕事をそっと見て学びながら、自分もいつか本当の女神になれる日を夢見ていました。人々はときどき、神殿に向かって感謝のお供え物をささげていました。美しい花、手作りのお菓子、塩やお酒、キャンドルの灯、歌や踊り……。
エシュラスはそれを見て、心があたたかくなるのを感じました。

「わたしも、こんなふうに人の役に立てる女神になりたいな……」

そう思いながら、毎日を過ごしていました。

ある日、空がにわかに暗くなり、世界に大きな嵐がやってきました。風が木々をなぎ倒し、雨が大地を飲みこみ、人々は家を失い、大切な人を失いました。エシュラスは、自分には嵐を止める力がないことに胸を痛めました。

「何もできなかった……」

そう思いながらも、エシュラスは今できることを一つ一つ、必死にしました。食べ物が足りない場所には、風に乗せて果物のある場所を知らせ、怪我をした人のそばには、薬草の種を落としていきました。けれど、エシュラスの姿は誰にも見えません。人々は悲しみの中にいて、お供えも止まりました。

「こんなに頑張ってるのに……どうして、誰にも届かないの?」

エシュラスは、だんだんと疲れて、心の光を失いかけていました。

ある夜、神殿の片隅でエシュラスは涙をこぼしていました。

「わたしは、女神になれるのかな。こんなに辛いのが、女神になるってことなの?」

そのとき、そっと近くにいた女神のひとりが、優しく話しかけました。

「エシュラス、あなたはよくやっていますよ。」
「でも、誰も見ていないし、ありがとうも言われないんです……」
「私たちはね、“ありがとう”をもらうために働いているのではありません。」

女神は、やわらかく微笑みながら言いました。

「私たちは、この世界とひとつなのです。私たちが本来の光を思い出し輝き始めれば、この世界もまた、そっと光り輝いていくのです。」

エシュラスはその言葉を胸の奥で感じながら、眠りにつきました。

嵐のあと、まだ傷ついた大地に、ひとつの小さな花が咲いていました。エシュラスは、その花に目をとめました。花は、誰に見られなくても、誰のためでもなく、ただそこに咲いていました。風に揺れて、光を浴びて、静かに咲いていました。

「……この花は、わたし。」

ふと、そんな思いがエシュラスに降りてきました。

「花は、誰かの『ありがとう』がなくても、自分の光を出している。」

そのとき、エシュラスの胸の中で、なにかがふわっとほどけました。この花のエネルギーは、なぜこんなにも静かで、揺るぎないのだろう。まるで、自分で自分を「大丈夫」って信じているみたい。

……エシュラスは、初めて気づきました。
「自分を信じる」という感覚に。
自分の存在そのものを信じる、愛するとはどういうことなのだろう。「何かをするから愛される」のではなく、ただ存在するだけで愛しいと感じること。そしてふと、思いました。みんなも、それぞれの場所で、必死に生きて、光っているんだ……。

「信じるって、こういうことなのかもしれない。」

そして、ある朝のことでした。
エシュラスは、夜明け前のまだ静かな時間に、胸の奥でぽつんと小さな声を聞きました。

「…わたしは、ちゃんとやってるよ。できること、できないことがあっても、ここで、ずっと、誰かを想っていたよ…」

その声はとても小さくて、でも深くあたたかくて、まるで土の中で芽を出そうとしている種のようでした。エシュラスはその声にそっと寄り添いました。否定せず、責めず、「そうだったね」と、心の中で抱きしめるように聞きました。
そのときでした。
ふと、心の奥に、静かで確かなひかりが灯ったのです。それは、誰かにほめられたからでも、「ありがとう」をもらったからでもなく、「わたしが、わたしを信じてあげた」から、生まれた光でした。

「大丈夫だよ」
「たとえ今は見えなくても、みんなの中にも、ちゃんと立ち上がる力がある」
「今は泣いていても、また笑える日がきっとくるよ」

そう思ったとき、不思議と胸があたたかくなりました。
“信じる”って、「未来がこうなるって保証する」ことではなかった……
“信じる”って、「今、ここにある小さな命のひかりを、ちゃんと見つめてあげること」なんだ。

その日から、エシュラスのまわりの空気が少し変わりました。光がやさしく揺れて、草や木がささやくように応えてくれました。彼女がただ“そこに在る”ことが、誰かの心を癒すようになったのです。それは、女神たちがかつてやっていたことと、まったく同じでした。エシュラスは思いました。

「ありがとうを求めなくても、ありがとうは生まれる。与えなきゃ、と思わなくても、私の存在はもうすでに与えていたんだね…」

そして、そっと微笑みました。そうしてエシュラスは、「誰かのため」でもなく、「誰かに認められるため」でもなく、ただ、「わたしとしてここにいること」を生きはじめました。それが、本当の女神のひかり。自然に世界とつながってゆく、愛のかたちでした。その光は、少しずつ広がって、やがて世界をふわりと包んでゆきました。

エシュラスは今日も、神殿の奥でやさしく光っています。目には見えなくても、その存在は世界に響いています。あなたの中の女神もまた、同じように静かに目覚めていくでしょう。
それは、「与える」ことから始まるのではなく、「わたしである」ことから始まる物語なのです。

ハートの白いラブラドライト

今回は「石」と「絵」のセット販売です。「絵」と一緒に「石」もお届け致します。

  • 石サイズ:5.5×4cm
  • 店:Maura
  • 絵サイズ:5.5×7.5cm
  • 額サイズ:9.5×14cm
  • 43,800円(税込・送料・額代込)

       

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